サポートいただいている地元行政の勧めで、エンジェル投資家向けのピッチしてきました。その様子をYoutubeで公開していただけることになりました。人生3回目のピッチです。
本エントリの下部に、発表に利用したスライドと登壇動画を公開します。スライドや動画に興味ある方はすぐに下部に行っていただければ閲覧可能なのですが、そこに至るまでの苦悩や自分の中で考えて考えて行き着いた方針について書いてみました。できればお付き合いくださると幸いです。
長年、学会発表はしていましたが、パンデミックの中でスタートアップの代表になって2年、「ピッチってなんだ?」まだよく分かりません。人気起業家の登壇やSteve Jobsがアイフォンを発表している映像も見てみました。あまりしっくりきません。
なぜ、聴衆は熱狂しているのだろう?ピッチを面白いトークショーと感じる人たちがいるらしい。逆に言えば、「Steve Jobsなら、絶対すごいことを言うはずだ」と思えるツボが確かにあり、そこに投げ込めばピッチは成功する。ただ、ぼくが訴えるべき相手は、COGNANOのファンじゃないし、アイフォンを買ったりアップルに投資したいと待ち構えている人々ではない。わざわざ暑い日に京都で話を聞いてもいいかな、と出向いてくれた見知らぬ人々にとって、つまらない話に聞こえたら失望されるに違いない。お互い、あまりに業界も興味も違うはず....
一般に、バイオってよくわからない、わからない話は面白いはずがない。どうして遺伝子や細胞を操作すると病気が治るロジックになるのか、理屈を追えばざっくり1時間はかかるだろう...いやいや、バイオむずいわ、どころの話じゃなく、自分の身に置き換えても、アイフォンの何が凄いのか、ぜんぜんわからなかった。ガラス画面で操作しやすい携帯電話だと、最近まで思っていた。バイオの何がどう凄いのか、説得はもっと難しい。それを10分で語れたら、Steve Jobs超えじゃないか...心は折れそうでしたが、すでにスタートアップの経営者であるぼくは、前に進むしかありません。
半年前、ピッチに初めて登壇して以来、会場を見渡して疑問に思ったり、気づいたことがありました。箇条書きします。
- 投資家の目線はどうやら明確に、IT系とバイオ系に分かれているらしい。金額も人数も圧倒的にIT系に投資意欲が集中しており、バイオ系は少数派であるらしい。
- IT系登壇者は若い起業家であるのに、バイオ系の登壇者は、ほとんど大成した方や教授風である(その証拠にスーツを着ている)。
- バイオ系のスタートアップは構造的に「すでに売上や利益が出ている」ケースはないので、「どれだけ専門家に認められているか」と言う説明が中心になる。
そのため、いきおい、すでに受けた投資、受賞、論文、特許の羅列になっている。
バイオマン出身とはいえ、ぼくらはスタートアップなんだから、ピッチ構成自体も、他人の真似ではなく、イノベートした方が良いのではないか(IT系の人はハックと言うのでしょうか?)...そこで、プロダクトやテクノロジーの説明ではなく、「どうして人々はバイオに投資しようと思わないのか?」を、水面下のテーマにしようと決心しました。人類にとって、医学創薬はむちゃくちゃ重要なのに、なんでつまらなく感じてしまうのか、すぐに儲からないと言う理由だけなのか、もしかすると、ぼく自身の振り返りになりそうな気がしたからです。
とは言うものの、いきなり意識が明確になったわけじゃなく、2年前からITエンジニアの人々(まつもとりーさんやゆいさん)と長時間会話してもらったことが大きく影響しています。バイオの基礎知識がほぼ共有できない状態で、でも分ろうとしてくれる人々に、どう言えば届くのだろう?「わからない」ことを諦めではなく、新しい可能性として昇華できる可能性はないのだろうか?その背景には、直感的に「この人たちの言うことは聞かなきゃいけない」と言う、リアリティーというか迫力のようなものを感じている自分がいて、それを頼りに会話を続けてきました。確かに、それは今や、体のどこかに蓄積しています。教えられたのは、一言でいうと「どんな世界を良いと思うのか?から逃げるな」ということだったかと思います。いずれにしろ、これはなかなか厳しいリクエストです。
加えて、地元行政からご紹介いただいたビジネス系メンターから、とても親切に指導いただいたことも幸運でした。投資家が何を求めているのかを考えろ、でも、今言えないことは仕方ない、ただし、その欠落意識を保ち失神するな、という教訓と理解しています。こちらも「逃げるな」です。
ピッチは、分かりやすく楽しいものじゃなきゃ、誰も聞いてくれない。そして登壇する限り、リアルから逃げない覚悟がいる。そう言う気分で、このたび、10分少々の登壇に臨みました。後で録画を見せてもらったら、滑舌が悪くカッコよくないのですが、内容的にはなんとか言いたかったことが言えたと思います。
楽しんでくださったら幸いです。