機械学習に関する研究や開発を担当している鶴田です。現在COGNANOは、IT技術を利用した抗体創薬の研究に取り組んでおり、先日乳がんに関する研究や新型コロナウイルスに関する研究の成果を論文として公開しました。我々はこれらの研究成果をより世界に広め、創薬へと繋げていくために、日本に留まらず世界中でビジネスや研究活動を行っています。その一環として、2023年2月25日〜3月4日に伊村明浩CEO、伊村泰子CFO、鶴田の3人でボストンに行ってきました。GoogleやMassachusetts General Hospitalの研究者の方々と、多くの有意義な議論を行うことができ、研究を通じて世界が広がる楽しさを強く実感しました。非常に緊張感のあるミーティングが続きましたが、日頃なかなか得られない達成感や充実感を存分に味わった1週間でもありました。今回はその出張レポートをお届けします!
Massachusetts General Hospital
ハーバードメディカルスクールの関連病院であるMassachusetts General Hospital(MGH)にて、Kronenberg先生にお会いし、ディスカッションさせていただきました。Kronenberg先生には、2022年11月にもお会いし、その際には乳がん関連の研究成果についてお話ししました。今回の訪問では、鶴田が注力して取り組んでいる「アルパカから生み出される膨大な抗体のアミノ酸配列のデータに機械学習を適用し、抗原抗体反応やエピトープ(抗体が特異的に結合する抗原の部位)を予測する研究」についてご紹介しました。この研究に関しては、以下の記事でより詳細に説明していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
Kronenberg先生は「機械学習のことはあまりよく知らない」とおっしゃりながらも、次々に本質を突く質問をされ、その理解の速度と勢いに圧倒されるばかりでした。特に、機械学習を用いてエピトープを予測する取り組みに非常に興味を持っていただきました。しかし、この取り組みに関して、あまり上手く説明できなかった質問もあったため、次にお会いできるときまでに、より内容や説明を洗練させていきたいと思いました。偉大な先生にフランクな場で研究内容を聞いていただき、議論できたことは大変良い経験になりました。ミーティング終了後は、すぐにカフェに入り、3人で反省会を行いました。一仕事終えた後のこのひと時が最高に楽しいです。
今回の出張ではGoogleのCambridge Officeにも訪問し、二日間に渡りGoogleの研究者の方々とディスカッションさせてもらいました。
初日にはランチに招待していただき、オフィス内のダイニングフロアで選びきれないほどのメニューから好きなものを選んで、おしゃべりしながらランチタイムを楽しみました。続いて、カフェスペースでそれぞれ飲み物をもらい、ミーティングルームへ移動し、熱いディスカッションが開始しました。
我々が独自に生成したアルパカ由来の膨大な抗体データを用いて抗原抗体反応を予測する深層学習モデルを構築した研究成果について共有しました。優秀なGoogleの研究者といえども、我々のデータが世界でも類を見ないため、それらのバイオ情報をどのように理解し、データを処理し、モデル化するのかを理解することは容易ではありません。しかし、データの価値や面白さは伝わっているようで、もっと知りたい!深く理解したい!という思いに溢れていて、多くの疑問や質問を投げかけてくれました。この溢れ出る知的好奇心に応えたいという思いで、ホワイトボードを使いながらなんとか英語で説明し、また質問をもらい、というのを何度も繰り返して、我々の研究内容やデータの特性や価値についてより深く理解してもらえました。今後の展開についても具体的かつとても面白い話ができたので、ぜひ続報を楽しみにしてください!
実は今回お会いしたメンバーにはこれまでも何度かオンラインでミーティングをしたことがあったのですが、直接会うことでより信頼関係が築けたように感じます。話すという目的はオンラインでも達成できますが、対面で会って同じ場所で同じ時間を共有することには代え難い価値があると実感しました。ということで我々はまた必ずボストンに帰ってきます!
夜のGoogleビル
Cambridge Innovation Center
Cambridge Innovation Center(以下、CIC)Cambridgeオフィスを訪問しました。CICは、スタートアップ企業を支援するインキュベーターであり、我々は2022年11月からメンタリングを受けています。今回は、CICの担当の方から創薬業界により詳しいメンターの方を紹介してもらい、COGNANOの会社紹介や、技術に関するプレゼンを行いました。
CIC内で最後まで入念に打ち合わせを行う様子
最初に各自のバックグラウンドを含めた自己紹介を行ったのち、我々の会社の概要、乳がん関連の研究成果のプレゼンを行いました。メンターの方は、バイオ技術の知識も豊富で、ビジネスの話だけでなく技術面にもあらゆる角度から質問してくださいました。熱心に議論を交わしたのち、「COGNANOのパートナーとなりそうな候補がすでに頭の中にいくつかあるが、まだ足りないパーツがある。これからも連絡を取り合いながら一緒にやっていこう」と言ってもらえ、今後のボストンでのビジネス開始を支援する姿勢を示してくれました。
1時間半にも及ぶメンタリングが終了したのち、CICが主催するVenture Cafeに参加しました。
Venture Cafeのオープニング
Venture Cafeは、毎週木曜日に開催されるイベントで、スタートアップ企業や、学生など誰でも自由に参加できる交流の場です。COGNANOとして参加した3名は別々に行動し、MITの学生や、エンジニア、投資家など、色々な方とお話しできました。翌日には、Venture Cafeで知り合った方からさっそく「とても可能性を感じるし興味があるからぜひもっと話を聞かせてほしい。たくさん投資家仲間もいるので手伝えることがある」などと連絡がありました。すごいスピード感ですね。もちろん、全てがいい話ばかりではないため、注意する必要がありますが、出会いや情報収集にはとても良い場であると思いました。
最後に
今回の約1週間の出張では、専門分野や国籍、母国語などに捉われず、研究というフェアな世界の中で議論を交わし、相互理解を深めていくことの喜びや楽しさを強く感じました。それぞれのミーティングの前には、緊張したり不安な感情もありましたが、仕事をやり遂げた後の達成感や充実感は何物にも代え難いです。ある意味、これが最高の大人(社会人)の遊びなのかもしれないな〜と感じました。この気持ちを忘れずに、今後も新しいチャレンジを続けていきたいと思いますので、ぜひこれからのCOGNANOにご期待ください!
全スケジュールを終え、クインシーマーケットでクラムチャウダーを食べる様子